講義
今回は、まず(1)共鳴という物理現象を説明し、(2)様々な楽器の音や(3)人の声がどのように産出されているかを解説しました。
こちらは講義でうまく再生できなかった、ロンドンのミレニアム橋の共振の映像です。
楽器を分類するやり方のひとつに、「ザックス=ホルンボステル分類」というのがあります。これは発音体によって、弦鳴楽器・気鳴楽器・膜鳴楽器・体鳴楽器・電鳴楽器に分ける方法です。こういった楽器がどのような原理で音を出しているか説明しました。
また、人の歌声や言語音(母音や子音)がどのように作られているか、その精巧な仕組みについて説明しました。 下の映像でもわかるように、舌を中心とした発声・調音器官の動きは複雑で、ヒトが進化で得た高次な脳機能によって可能になっています。
こちらは、ベルリンフィルのホルン奏者サラ=ウィリスさんの口腔内の動きです。楽器中の気柱と口腔内の気柱は、互いに影響を及ぼし合うので、管楽器の演奏には口腔内の動きのコントロールが欠かせません。ホルンに限らず管楽器奏者にはとても参考になる映像です。
Q&A
今週のピックアップ
人は、原音と調音を調節する器官により言語を話すことができる。しかし、動物は、うなったり吠えたりしかしない。この違いは、人間と動物のどの器官の違いによるものなのか疑問に思った。(農2)
動物も舌や歯があり、声も出すのになぜなぜ話せないのか疑問に思いました。やはり口や舌、声帯をコントロールするのも脳であって、脳が人間ほど発達してないからなのではないからだと思った(工1)
これから先、類人猿が言葉を持つことはあるのだろうか。(医医1)
ヒトで舌が発達しているというより、舌の巧緻な運動を制御する脳の機能が発達している、と考えた方が良いでしょう。ホムンクルスは、口や舌が大きかったことを思い出しましょう。これだけ複雑な制御をするには、それだけ広い脳部位を使う必要があるわけです。
ただ、脳さえ発達すれば、どんな動物でも話せるようになるかというと、そういうわけでもなく、喉から口にかけての気道の体積や形、またそれを制御する筋肉がどのようについているか、ということも関係しています。例えばチンパンジーは、声道の形が、発声には向いていないことがわかっています。このことは、次の学生が指摘しています。
調べてみると、野生動物の中で最も人間に近縁な種である、チンパンジーは軟口蓋から喉頭蓋までの咽頭が人間より短いため、母音と子音の使い分けが出来ないと分かった。しかし、軟口蓋から喉頭蓋までの咽頭が長いと母音と子音の使い分けが出来るようになるメカニズムが分からなく、仕組みを詳しく知りたいと思う。(農1)
ヒトでは咽頭の位置が下がり、声道が長くなっています。これによって声道の形をさまざまに変える自由度が増したことが、ヒトで言語が進化した理由(のひとつ)とされています。
発音体の振動が共鳴体に伝わると大きい音が鳴るのはわかったが、エネルギー保存の法則はどうなっているのか?(理)
小さいはずの音が大きくなるわけですから、エネルギーが増えているように見えますよね。
しかし、弦やオルゴールのピンの振動が共鳴体に伝わると、大きな音がする分、弦やピンの振動の振幅が早く減衰します。このようにしてエネルギー保存則は保たれます。
私も本は高いと感じていましたが、本自体の価値ではなく、膨大な時間とお金をかけて集約された情報を買っているとイメージすると確かにとてもコスパがいいと感じました。(人文1)
僕は情報を得るときはインターネットをよく使っているので、日常で情報を得るときにお金がかかるという経験はほとんどありません。(理2)
本が安いのは、講義で伝えた通りです。
インターネットなら、ただで情報は手に入ると思うかもしれません。しかし、情報には、質の高いものと、質の低いものがあります。そして、ここで覚えておいてほしいのは、「質の高い」情報は、決して、ネットで無料では拾えないといことです。こういっては残念に思うかもしれませんが、皆さんがネットで無料で簡単に得られる情報の99%は、質の低いものです。
例えば、ネットの無料のコンテンツが、あなたの通った塾の授業の代わりになりますか? 私の90分の講義と同じクオリティの情報が、ネットで得られますか?
「質の高い情報」と「質の低い情報」の見分ける力を育てることが、これからの皆さんの課題です。どうやったらこの2つを区別できるようになるかというと、質の高い情報に触れ、それがどういうものかを体感していくしかありません。うまいウニを食べたことがない人に、うまいウニの味はわからないのと一緒です。
お金を払って、本を読みましょう。インターネットの有料のサブスクリプションでも良いでしょう(私もいくつか加入しています)。
もちろん、有料でもくだらない本や情報源もあります。でも、くだらない本にたくさん触れることも、良い本とは何かを知るために、絶対に必要なステップです。私もこれまで相当な金額の失敗をしていますが、それは必要な失敗であり、無駄ではなかったと思っています。
No pain no gain ならず、 No pay no gain ですね。
そのほか
共鳴(共振)
ブランコはどんなに足を動かしても速さは変わらないと言っていたが、揺れ幅が大きいほど速く動いているように感じるのはなぜか?(医)
私が変わらないといったのは速さではなく、ブランコの振動の周波数です。周波数が変わらないということは、周期が変わりません。つまり、ブランコの1往復にかかる「時間」が変わらないのです。振れ幅が大きく揺れると、同じ時間の間にたくさんの距離を進みますので、ブランコが真下を通過するときのスピードは速くなります。
講義の冒頭のロンドン・ミレニウム橋に似た事例がアメリカにもあり、タコマナローズ橋という橋が崩壊したことがありました。これを高校の時に初めて見て衝撃を受けたました。(理ほか)URL:https://www.youtube.com/watch?v=3mt6KpWvpbM
これはとても有名な映像で、よく共振の例として紹介されますね。私も昔、そのように習いました。しかしこれは共振ではなく、強い風で(飛行機の翼のような)揚力が生じ、それによってうねっている、というふうに今では理解されています。
楽器
オルゴールは空中で手に持って鳴らした時と、共鳴するものに密着させて鳴らした時の音の大きさがかなりあり、驚き、面白いと思いました。(多数)
カポエィラの漫画「バトゥーキ」にビリンバウというもともと弓だったものが楽器になったものが出てきたのですが、それの下部に謎の木のお椀のようなものがついていてなんでだろう、と思っていたところでした。(法)
多くの楽器が、振動体+共鳴体、という構造をしています。オルゴールが素敵な箱に入っているのは、見た目だけの問題ではなく、共鳴で大きな音を響かせるという大事な機能があるのです。
ビリンバウもそうですし、スマホを机の上に置くと大きな音がするのも、机が共鳴体となるからです。
楽器について
弦の長さだけでなく、重さも音の高低に関わっていることを初めて知った。ピアノの中身を見たとき、低い音の弦の色が違うことに疑問をもっていたけど、すっきりした(など多数)
ピアノ低音域の弦には銅線が巻きつけてありますが、これは質量を増やすことで共振周波数を低くするためです。これをしないと、低音の弦が長くなりすぎて、ただでさえ大きい楽器であるピアノが、もっと大きくなってしまいます。エレキベースの弦が太いのも同じ理由です。エレキギターと同じ太さの弦でベース音域の低音を出そうとすると、楽器が倍の大きさになってしまいます。
ピアノについての質問なのですが、弦の長さを質量で担保しているということでしたが、それは張りを弱くすることで担保できないのでしょうか?(経)
張りを弱くしすぎると、たわんでしまって、なんの音も出なくなります。逆に、強く張りすぎると、弦は切れてしまいます。このように、張りの強弱による共鳴周波数の調節には、限界があるのです。
アップライトピアノの弦の仕組みはどうなっているのだろうと気になりました。弦が床に垂直に配置されていると聞いたことはあるのですが、ほぼ真四角の形状なので、グランドピアノのような弦の長さの調整は難しいのではないかと思います。(多数)
弦を縦方向にうまく収納しています。反響や共鳴のための空間や部材が少ないので、大きな音も出にくいですし、音色の幅にも制限が出てきます。
グランドピアノでは、上部の蓋を開けて音をより遠くまで響かせることがあります。この場合、ピアノの振動体となるものを取っ払ってしまっているように感じますが、なぜ音が響くようになるのか、疑問を感じました。(教育)
ピアノで共鳴体の役割を果たしているのは、屋根というより、弦を留めている金属製のフレームや、その下にある木製の響板です。
屋根を閉めると、音が外に出ていかないので、音量が小さくなります。
コンパクトにするためにピアノの低い方の弦が途中で折り曲げられている、そして銅の線が巻いてあり線密度を上げるという工夫がしてあることを初めて知りました。逆に演奏するスペースが気にならなければそのような工夫をせず大きなピアノを作ることができるのではないかと思い調べたら、やはりありました。(教)
過去の受講生が教えてくれた情報です。
トランペットでは同じ指で押さえても違う音が出せます。例えば全部開放状態で吹くとC,D,F(?)が出ますがこれは口で無意識に周波数を調整しているのでしょうか?(医保)
金管楽器では、同じ運指のまま、唇の張力や息の圧力をコントロールすることで、どの倍音を出すか吹き分けます。だから、バルブが3つしかなくても大丈夫なのです。
倍音の吹き分けに失敗したのが、「音を外す」というやつです。意図しない倍音が鳴るという意味では、クラリネットのリードミスと同じです。
エレキギターのピックアップに「あー」と言っても音が拾われない理由がわかった(医保)
ピックアップは、空気の振動を拾っているわけではありません。エレキギターやエレキベースの弦は金属でできています。これがピックアップというコイルの近くで振動すると、電磁誘導によってコイルに電圧変化が起こります。この電圧変化をアンプで増幅してやることにより、音が出ます。
エレキギターのピックアップについてなぜ一番下にあるピックアップだけ向きが斜めなのか疑問に思いました。(農)
高い音を出す弦と、低い音を出す弦では、振動の「腹」の位置が違うからです。振動が一番大きい腹の下にピックアップがあると、大きな音が生まれます。
パイプオルガンやアコーディオンはピアノと同じく鍵盤はあるものの弦楽器なのではなく、気鳴楽器であるというように、今後は見た目に惑わされずきっちり分類できそうです。(教)
パイプオルガンは、あの巨大な筒の中で気柱が共鳴して音が出ます。ですから、気鳴楽器です。
https://www.ryutopia.or.jp/wp-content/uploads/2017/11/OrganOmoikkiri_2018_01.jpg
鍵盤を使って弾くので、鍵盤楽器ではないかという指摘もあるでしょう。とすると、ピアノも鍵盤楽器ですね。もちろんそういう考えもありますが、それは「ザックス=ホルンボステル分類」とは違う、別の分類法です。
口笛とはどのような方法で音を出しているのでしょうか。口「笛」と言われますし、音色も笛のような音がしますが、尺八やリコーダーのようなエッジの役割を口がしているとは思えません。(工、ほか)
唇の外で乱流が起きます。乱流は、様々な周波数の振動を含んでいます。そのうち特定の周波数の成分が、口の中の空洞と共鳴して音が鳴ります。
唇を吹きながら色々と口の中を変えて実験してみましょう。
日本語の「ん」には5種類の発音があるという動画を最近見たことを思い出した。「千円のせんべいにあんこが本当に混入した」という例文に出てくる「ん」は全て違う発音であるそうだ。日本語以外の言語でこのような発音にややこしい程種類がある言語はあるのか。(理2)
動画の紹介ありがとうございます。発音
私は中国語をとっているのですが、そこでもpaとbaの違いの話があって、そこでは有気音と無気音の違いだと習いました。(人文)
記号は同じように/pa/ や /ba/と書いても、その特徴は、中国語の日本語では違います。日本語では、講義で説明したように子音部の長さで決まりますが(有声と無声)、中国語ではこれとは全く違い、息の出し方(有気と無気)で区別します。
この音声を聞いて、中国語の/pa/ と /ba/を聞き分けられますか?
難しいですよね。ということは逆に、中国からの留学生にとっては、日本語の有声音と無声音の区別が難しいということです。そのため、「大学(ダイガク)」と「退学(タイガク)」を聞き間違えるといったことが起こります。
リコーダーなどの指で塞がれた穴のうち、気柱の長さに影響するのは手前から最も近い穴だけのはずなのに、最も近い穴を塞いだままでその穴よりもリードから遠い穴を塞ぐか否かで音が変わるのはなぜですか?(医)
一番上だけでなく、下の方の穴も気柱の振動に影響をあたえます。リコーダーで穴を飛ばして開けるのは、こうして、気柱の長さを微調整しているのです。
クラリネット
クラリネットが閉管構造であり、それがリードミスが関係していることがわかった/クラリネットのリードミスが目立つのには理由があったとは!(多数)
クラリネットの「リードミス」というのは、演奏上の技術的ミスで、耳障りで場違いな高音が出てしまう現象です。この原因は、(リードを強く噛んだり息圧が強すぎるなどの理由で)意図しているよりも上の倍音が鳴ってしまうことです。間違って上の倍音が鳴ること自体は、他の管楽器でも起こり得ますが、なぜクラリネットで、このミスが目立つのかというと、特殊な「閉管構造」により、2倍音を飛ばして、随分と高い3倍音が鳴ってしまうからです
今回の講義で「管楽器でクラリネットだけが閉管楽器である」という話が出たが、私は、フルート以外の他の管楽器はなぜ開管楽器として扱われているのか、疑問に思った。
授業後に改めて定義を確認したところ、「管の一方だけ塞がったのを閉管と呼び、両方が空いたのを開管と呼ぶ」ということだった。この定義にあてはめれば、クラリネットは間違いなく閉管楽器である。しかし、フルート以外の管楽器であっても、「一方が吹き口、もう一方が出口」というクラリネットと同じような構造になっており、閉管楽器の特徴にあてはまっていると思う。どうしてこれらの管楽器は閉管楽器ではなく開管楽器とされているのだろうか。どのように考えてもなかなか理解できないので、なぜ閉管楽器ではないのか教えていただきたい。(人文1)
むしろフルートの方が閉管楽器のように感じます。何を持って閉じてる、開いてるとしているのか気になります。(医医)
外見では分かりませんが、楽器の中を見ると、クラリネットの中の管はほぼ円柱ですが、サックスやオーボエの内管は円錐形で、ベル向かってすこしずつ広がっています。この違いが重要です。とはいえ、現実的には、どちらも、理想的な開管構造や閉管構造とは違います。ただ、実際に音を鳴らしてみると管の中の空気の振動は、サックスやオーボエが開管構造、クラリネットは閉管構造で近似できるのです。あくまでも近似ですので、クラリネットでも実際には偶数倍音も少しは鳴っています。
フルートの歌口(息を吹き込む穴)は、管の一番端ではありません。さらにその左側に空間がありますよね。ですから、歌口部分が空気の振動の開端となります。
クラリネットは閉管楽器ということでしたが、口から息を吹き込むマウスピースとリードの間には隙間が空いてるように思えるので開管楽器のように思いました。むしろフルートの方が閉管楽器のように感じます。何を持って閉じてる、開いてるとしているのか気になります。(医医)
気中の振動の節と腹がどこににあるかによって、「閉管的」な振動と「開管」的な振動が区別されます。このどちらの振動になるかは、実は、なかなか難しい物理学で、歌口の構造、管の内部構造、ベルの広がりなど、いろいろな要因で決まっています。
クラリネットは、フルートやオーボエと違って、ビブラートをかけないと思いますが、これは閉管構造と関係ありますか?(農)
クラリネットの音が目立つおすすめの曲などはありますか。(人文1)
クラリネットでも、ビブラートをかけることはあります。(また、フルートやオーボエでも、かけないこともあります。)楽器の構造ではなく、演奏スタイルの問題です。
ビブラート派のクラリネット吹きは何人もいますが、ここではリチャード・ストルツマンを紹介しましょう。
クラシックでも、東欧のチェコフィルのクラリネットパートはビブラート付きで交響曲を演奏しますし、Klezmerというユダヤ音楽ジャンルのクラリネットは、ビブラートだけでないもっと様々な変わった演奏技法が“標準”です(下)。
クラリネットひとつとっても、奥が深いですね。
ヒトの声
オペラ歌手は、日本語であっても、何を言っているのか聞き取れません(農)
幅広い音域で、よく響く大きな音を出すことと、言葉を聞き取りやすくすることは、発声の原理的に両立しないので、それはある程度、仕方のないことです。
「声変わり」がどのようにして起こるのか気になり調べたところ、声変わりは成長により声帯が長く厚く変化し、振動数が下がるため起こるようでした。声変わりは男性に起こることであると思っていましたが、成長による声帯の変化なら、女性も同じく声変わりしてもいいはずだと思い、疑問に思いました。(理3)
自分で疑問をもって調べてくれて素晴らしいですね。あなたの推論は正しく、男性ほどは目立ちませんが、女性にも声変わりがあります。
私たちは大きな声で応援をしたり、カラオケで長い時間歌ったりしたときは「声が枯れた」と言って自分本来の声やそもそも声自体が出なくなるなどします。これはなぜですか。(人文1)
声帯が炎症を起こして、うまく振動できなくなることで声が出にくくなります。楽器でたとえるなら、リードがへたったり、弦が錆びたりする状態ですね。
昔から「これは日本語にはない音だから。」というセリフを英語の先生から聞くたびに疑問に思っていました。しかし、本講義のおかげで謎が解けたので大変うれしかったです。(理2)
母音の数が一番多い言語が気になったので調べてみました。ギネス記録によると母音が最も多いのは中央ベトナムのセダン族の言語で、なんと55個も母音があるそうです!ちなみに、一番母音が少ないのはアブハズ語で2語しかないそうです。(工2)
私たち日本人は母音に5音しか使わないため、ほかの言語で使われるaとeの間の発音のような普段使わない母音の発音が難しい。それは、成長する過程で、シナプスが減っていった結果、調音器官のコントロールがうまくいかず、慣れ親しんだ言語以外の母音の発音が難しくなってしまうということなのだろうか。もしそうなのであれば、生まれたての赤ちゃんはたくさんのシナプスがつながっているから、どんな発音にも対応でき、親など自分の身近にいる人が話す言語に対応できるようになっているのだろうか。(医保)
日本語と外国語で、使われる母音や子音が異なるのは、舌などの調音器官に構造的な違いがあるというより、それをどのように動かすかという、脳による運動制御の問題です。そしてこれは遺伝的に決まっているのではなく、最初に言葉を覚える小さい頃の学習で決まります。だから、誰もがどの言語を話せるようになる可能性があります。しかし、この学習には、とくに学習が進みやすい期間があり(シナプスの刈り込みのおこる時期と対応しています)、それを過ぎると、学習が困難になります。
アブハズ語は母音が少ない分、子音が約60個と多くすることで、音素の種類を増やしているようですね。
様々な母音の、前舌・後舌・広い・狭いという図の中で、同じ場所に2つの音が書いてありましたが(例えば、i と y)、これは同じ下の形で違う音を出しているのですか?(農)
同じ下の形でも、唇を丸くするかどうかで、微妙に音が変わりますよね。これが i (非円唇)と y (円唇)の違いです。日本語の母音は基本的に非円唇ですが、o は円唇寄りです。
腹話術師の人はどうやって子音をつくっているのだろうと疑問に思った。(工1)
以前腹話術師のいっこく堂さんは、本来唇で作るマ行の子音を舌で作ることで完全に口を閉じた腹話術を完成させたと聞いたことがありました。その時は意味が分からないと思いましたが、これは本来無意識で行っている作業を意図的に違う場所で行っているのだなとやっと理解しました。(人文)
腹話術では、外から見る限り、口が動いているように見えませんね。腹話術のホームポジションとして、歯を軽く閉じ、唇をうすーく開けて、舌の力を抜きます。この状態で、けっこうたくさんの音が出せます。口の中で息を遮る子音については、わりと簡単です。
でも、唇を閉じることで息を遮る子音(m, p, bなど)は、腹話術をするのは非常に困難です。コツとしては、発音位置の近い子音に置き換えて(bならd)、なるべくそれっぽく聞こえさせるように練習するそうです。
逆再生
回文を録音して逆再生しても回文として聞こえないで、変な音になることを初めて知った/逆再生の音を予測するにはローマ字表記が役にたつ理由がわかった(複数)
自分の中では納得がいかず、授業後自分の携帯で声を録音して逆再生して聞いてみました。はっきりと「うなぎなう」と言ったつもりだったのに、「うあんいがぬ」と聞こえたのでますます不思議になってしまいました。(工)
「Akasaka」ならば逆再生しても同じに聞こえることに気づき、感動してもっと調べようとしたところ、いの一番にこれが出てきてなんか悲しくなりました。(工)
前にテレビで歌を逆から歌う「逆さ歌」を歌っている中田芳子さんという方が紹介されていたのを思い出しました。(人文1)
回文「うなぎ、なう」をローマ字で書くと「unagi nau」で、これを逆から書くと「uan iganu」になります。録音の逆再生で聞こえるのは、「うなぎ、なう」ではなく、ローマ字を逆にした「uan iganu(うあん いがぬ)」に近い音です。日本語の各音は、「子音→母音」の順番に音になっているので、これを逆に聞くと、「母音→子音」になるからです。
でも実際にやってみると、なかなか思った通りに聞こえず、かなり難しいことがわかります。このことから、母音と子音の連結は、実はこれほど単純な仕組みではないことがわかります。
それを踏まえると、中田芳子さんの芸は驚異的です(https://youtu.be/A8ZWcayDkhk?si=cjcw4INfgm3HYSIQ)。
その他
この講義を受けてから、日々の些細なことにも疑問を持とうと思い、「疑問ノート」を作るようになりました。その内容はいたってシンプルで毎日過ごす中で目についたものに疑問を持つ、ということです。そして疑問に思ったことをノートに書き自分なりに答えを書く。その答えは少し寝かせてから本などで調べる。
例えば「なんで鳩は首を振るのか」など。
先生が授業を通して伝えようとしている、「自分で考えるという力」が年々衰えているように感じていたのでこの「疑問ノート」はとても周囲の環境を見る目が変わりました。(理)
素晴らしいことです。とても嬉しく思いますし、その経験はきっとあなたの財産になります。